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夏の空は眩しく、二階建て家屋が密集する住宅街に蝉の鳴き声が響いている。
ヒデは目を細め、坂道を一気に駆け下りた。
交差点に差しかかると、見覚えのある背中を見つけた。
「タ、タケシ……?」
「んあ、ヒデ!?」
タケシは振り返るなり、驚きの声をあげた。
「な、何してんだ?」
「タケシこそ」
「お、俺はちょっと用があって」
「俺も……」
二人は気まずそうにうつむく。
「……ヒデ、何持ってんだ?」
タケシが、かたく閉じられたヒデの拳に気付く。
「お、お前こそ」
見ると、タケシの拳も強くにぎられている。
お互いの視線を受け、二人はゆっくりと拳を開いた。
ヒデの手には、赤い蝶ネクタイの描かれた四角い消しゴム。
タケシの手には、顔の描かれたまんまる消しゴム。
二人は顔を見合わせて笑った。
「ヒデ、今日の友は明日の敵な」
「何それ?」
「バーカ、分かんなきゃいいんだよ~」
信号が青に変わり、二人は肩を並べて交差点を渡った。
~おしまい~
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