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「何をやってるんですか! このバカ兄さん!」
怒号と共に、強烈な激痛が臀部へと走った。
どうやら掃除機のホースの先についている管が俺のお尻にめがけて飛んできたようだ。
こんなことになったのは、かれこれ数時間前の事である。
ここ有袋町は、元々畑と住宅地しかない所謂田舎町だった。
数十年前に某企業がニュータウン計画を施行し、駅前に高層マンションを4本建てた。けれども資金が持たず、結局畑と住宅地に不釣り合いなマンションが4本建っただけのなんちゃってニュータウンだ。
そして駅から数百メートル南に離れた場所に位置し、赤い屋根が特徴的で白い二階建ての一軒家に住んでいる。
「暇すぎて死にそうとは今の事なんだろうなぁ」
白系フローリングの上に3人掛け用の赤いソファーがあり、手すりに頭をのせて足を組みベッドの様にして、白い天井を眺めていた。
俺の名前は長谷川亮介、今年の四月から高校生になる。
現在は3月で、冬の寒さが抜けて暖かくなり始めた気温をソファー後ろの網戸越しに感じながら、特徴の一つである目元まで伸びた黒い髪の毛を人差し指に巻き付けていた。
この行動に意味はないけれども、手持無沙汰の時にはちょうどいい時間つぶしである。
「暇なら掃除を手伝ってくださいよ、兄さん」
もう、と両頬をぷっくりと膨らませながら妹の長谷川千夏は言った。
俺には二人の双子の妹がいる。 姉の千夏と妹の千秋がいて、今回は千夏だけの紹介をしよう。
耳を覆うくらいの長さのショートヘアーで、顔のパーツが整っており、丸い形の大きな瞳は幼さを感じさせる。
身長は大体、頭のてっぺんが俺の顎くらいの高さ。姉が勝手にジャニーズに弟を応募させるような感覚で、アイドル事務所に応募したらすぐ通過すると思う。
千夏は手に持っていた掃除機を俺に渡して、「私は窓ふきをしてくるので、お父さんとお母さんの寝室をお願いします」と言って後にする。
千夏は今年で中学二年にもかかわらず、ここまでテキパキしていると、将来の彼氏さんは苦労するだろうなぁと考えていたら、その失礼な愚痴を見透かすかのように「早くやってくださいね」という声が洗面所の水の音と共に聞こえてきた。
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