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「腹を立ててすぐに手を出すのは、人間のやることじゃない。  野生動物と一緒だよ」 有難迷惑の成敗が現方式で(まか)り通るのであれば、 それは暴力を容認することに他ならない。 「その行為を有難迷惑と感じるかは人それぞれだ。  一時の状況のみから邪推して、普遍的にそうだと決めつけるのは間違っている。  例えば、田代さんのお裾分けが  貰ったその日の食卓に並ぶことも何度かあったしな。  有難迷惑の撲滅を目標にやってきた俺たちの行いも、  ある人から見れば、有難迷惑に当たるかもしれないのさ」  間髪入れずに、感撃丸の反論が捻じ込まれる。 『それでも……奴らの腐った性根を叩き直さねば、主人が浮かばれない!』 感撃丸はあくまで松野 正に忠誠を誓うようだ。 その忠実さが墓穴を掘っているとも知らずに。 「本当にお前の主人は有難迷惑を恨んでいたのか?」 『余の名は”感撃丸”だ。主人が命名したのだ。それ以外になかろう』 思惑通りの返答に、俺は思わずほくそ笑んだ。 「なるほど。お前は自分の名前から、与えられた使命をしたんだな?」 『何が言いたい?』 ここで、感撃丸を柄が上になるように持ち上げた。
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