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 俺は荒らぐ息を抑えて、感撃丸に問い質す。 「どうして、こんなことを……?」 奴の身勝手な振る舞いに俺と妻が巻き込まれたと考えると、 どうしてもはらわたが煮えくり返って仕方ない。 ただし、妻の有難迷惑に、自分が多少の憤りを感じていたことも、 紛れもない真実であった。 『余の名を読み解いてみせよ』 感撃丸はそう一言だけ告げた。 感撃丸。感激でなく感撃。感と撃。つまり…… 「感謝と、反撃……!」 『余は、其方から数えて7代前の祖先 松野 (ただし)によって造られた木刀だ。  彼こそが有難迷惑に鬱憤を溜めていた張本人。  憎しみの念を込めて生み出した余を握り、  夜な夜な感情に任せてあらゆる物を痛め付けていた。  彼は小心者であるが故に人を斬ることはしなかったが、  宿していた憎悪は相当なもの。  それは未だ余の中に受け継がれている。  言わば、主人の恨みを晴らす絶好の機会を、  主人の腕の代わりとなる人間を、今か今かと待ち侘びていたのだよ』 何十年、何百年と耐え待った末、自分が標的に選ばれたという事実が癪に障る。 それほどまでに、俺は不甲斐ない人間だったのか。 やりきれない思いが紆余曲折して、段々と感撃丸の信念に近付いていく。
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