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 長年の計画が動き出し、活気を取り戻した感撃丸は、饒舌に拍車が掛かる。 『有難迷惑は実に(たち)が悪い。  行為者は親切心を以て行ったと思い込んでいるが、  被行為者は正反対の心情を抱く。  その食い違いで関係に亀裂が生じることは珍しくないのだ。  行為の裏に何か良からぬ魂胆が潜んでいる可能性も十分にある。  親切を施した者を疑っておいて損はない』 感撃丸の弁論に自然と耳を傾けてしまう自分がいた。 恐らく奴の手の平で転がされているのだろう。だが、もはや抗えない。 『其方は妻の行いに感謝するだけで終わったか?  (いな)、反撃を望んだ。そうだろう?』 深く頷いた俺に、躊躇いの気持ちは一切なかった。 『余が斬った者は丸一日気を失うだけで、  その後はほぼ元通りの生活を送ることができる。  勿論、有難迷惑を仕出かす根源を断ち切った上でな。  だから、遠慮なく斬り倒してもらって構わない』 腰に感撃丸を差し、毅然とした態度で外へ繰り出す。 外は真夏の夕方。風が冷たい。僅かに上がった左口角を俺は親指でなぞった。 「『さぁ、世直しといこうか』」
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