59人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
長年の計画が動き出し、活気を取り戻した感撃丸は、饒舌に拍車が掛かる。
『有難迷惑は実に質が悪い。
行為者は親切心を以て行ったと思い込んでいるが、
被行為者は正反対の心情を抱く。
その食い違いで関係に亀裂が生じることは珍しくないのだ。
行為の裏に何か良からぬ魂胆が潜んでいる可能性も十分にある。
親切を施した者を疑っておいて損はない』
感撃丸の弁論に自然と耳を傾けてしまう自分がいた。
恐らく奴の手の平で転がされているのだろう。だが、もはや抗えない。
『其方は妻の行いに感謝するだけで終わったか?
否、反撃を望んだ。そうだろう?』
深く頷いた俺に、躊躇いの気持ちは一切なかった。
『余が斬った者は丸一日気を失うだけで、
その後はほぼ元通りの生活を送ることができる。
勿論、有難迷惑を仕出かす根源を断ち切った上でな。
だから、遠慮なく斬り倒してもらって構わない』
腰に感撃丸を差し、毅然とした態度で外へ繰り出す。
外は真夏の夕方。風が冷たい。僅かに上がった左口角を俺は親指でなぞった。
「『さぁ、世直しといこうか』」
最初のコメントを投稿しよう!