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 十数分歩き、最寄りの商店街へ出た。 有難迷惑は人の数だけ存在する。感撃丸の教えだ。 さぞかしここには、斬られるべき愚者が山ほどいるに違いない。 「商品の方、出口までお持ち致しますよ」 アパレル店員が客の購入した商品を率先して運ぼうとしている。 一方で、客は戸惑い、「この短い距離を……?」と言いたげな顔だ。 まさしく商品の受け渡しにラグが発生する、無意味な行為の代表例。 組織からの報復を恐れ、自ずと浮かんだ疑問を無きものにしてしまう 店員の意志の弱さが如実に表れている。 どうせ店員はこの先も、接客マニュアルを盾に強行していくのだろう。 これは立派な有難迷惑だ……! 『斬れ』 命じられるより前に、俺の手は感撃丸に掛かっていた。 店員の斬られる様を見た客が悲鳴を上げて逃げ出したが、大したことではない。 俺は依然として落ち着き払い、アーケードの下を進んだ。
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