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エピローグ
「お母さん、どうしたの? 今度はお母さんがぼうっとしちゃって」
娘の結衣がそう言って笑う。そうね、少し疲れたのかしらねと言って母は微笑んだ。
「拓真君さ、どこか近くにいるような気がするんだ。不思議だけど」
母は娘の言葉に返事をすることなく再び深紅の花に目を遣る。蝋燭に燈る炎のような花。それは弔いの炎。産まれてくることのなかった我が子と、そして……。母は心の中で呟く。
――そうね、結衣。案外すぐ近くにいるのかもしれないわよ。
了
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