2.最悪の思い出

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(そう、だからね、びっくりしたのよ母さん。あんたのクラスにあの男の子供が転校してきたのを知ったときは、ね)  苗字を聞いてひょっとして、と思った。珍しい苗字だ。そして授業参観に来ていた加々見拓真の父親を見て確信した。アイツだ、と。アイツは私には気付きもしなかった。それはそうだろう。私など食い散らかしてきた女の一人に過ぎないのだから。アイツの息子は父親にそっくりで結衣が家に連れて来た時にはらわたが煮えくり返る思いだった。クラスの女子とうまくいっていなかった結衣はどんどんアイツの息子と仲良くなる。「ちゃんと女の子たちとも仲良くしなさいよ」と何度か言ううち結衣は加々見の名を口にしなくなったが私に隠れて遊んでいることはわかっていた。そしてあの日、私は見てしまうのだ。
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