13 そこを動くな

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13 そこを動くな

「え? レディ・キャンディーは、それで濃い化粧を?」 「そう」 「そんな事しなくても、王太子妃の妹という事で一緒に暮らしたらいいのでは?」 「え?」  夕食後、婚約中らしくバルコニーで星空を眺めつつ殿下とお茶をしていたら、傍に侍るダグラスがそんな事を言った。 「そっ、そんな事できるの!?」 「ああ。できるんじゃないか?」  殿下がカップを口に近づけながら、しれっと答える。 「……」  昼間、その話したわよね?  なんで10時間待ったの。   「確認してみましょう」  ダグラスが姿を消す。  わずかな沈黙を挟み、殿下が真顔で私を見つめた。 「寝室は別な」 「え?」  どっちと?   「なんだよ。俺とお前とキャンディーで寝るわけないだろ」 「……ええ」  だから、組み分けはどうなのよ。  どこで割るの。 「紅茶が美味しいわ」  もう話題を変えるに尽きる。 「いい風ね」 「夕食、あれで足りたか?」 「獣じゃないのよ。人より少し多いくらいでちょうどいいの」 「気を遣うなよ? 女はすぐカリカリするから」 「殿下」  ダグラスが戻って来た。   「OKです」  ここの王家はなんでもありだ。 「ただ、王宮住いとなると行事に参加しないわけにもいかないですし、自然と他国の花嫁探し連中にも目をつけられます。そうなると離ればなれの規模が桁違いに……」 「大丈夫。梃子でも動かないから」 「肝の据わった姉妹だよな」  殿下と微笑みを交わす。  するとダグラスも、星空の下でなかなか妖艶な笑みを浮かべた。
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