15 結成せよ

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「銃を扱える私を、狙撃手だって言ったの」 「は?」  殿下の声が、少し高い。  それほど突拍子もない、馬鹿げた事だって、わかってる。  わかってるからこそ、馬鹿々々しくてむかつくのよ。  あいつ…… 「狩猟と狙撃の区別もつかない馬鹿だったのよ。射撃大会もたぶん、狙撃手の腕自慢大会だと思ってるわ。男のくせに、狩りもできなきゃ銃も撃てない。まあ、それでもいいわよ。だけど、狙撃って……人は殺さないっつーの」  でも、いつも私に殺されるんじゃないかってビクビクしていた。 「失礼な奴」 「だよなぁ」  殿下はあっけらかんとしている。  大袈裟に受け取らないところも、結構よかった。  私はまた笑顔を向けた。 「あなたは、私の銃の腕を買ってくれたでしょう? だから心配ないの」 「もし撃つとしたら?」 「え?」  殿下が大真面目に続ける。  今日は意外性に溢れている日だ。 「どんな事があっても、絶対に人を撃たないのか?」 「……」  彼の言いたい事は、理解できた。  銃を扱うという事は、他者の命を握ると言う事だ。  私は迷わず答えた。 「いえ。撃つわ」 「いつ?」  間髪入れずに質問を重ねてくる。  だから私も即答した。 「家族を守るとき。もしキャンディーが襲われそうになったら相手を撃つし、瀬戸際なら仕留めると思う。あまり、そうなってもらっちゃ困るけどね」 「正当防衛なら妥当だ。俺も、お前のためなら迷わず撃つ。そういう場合に嫌われたら困るけど、ま、心配なさそうだな」 「気が合うわね」 「ああ。最初からそう思ってる」  殿下がゆっくりとこちらに向かってきて、正面でしゃがんだ。  間近から覗き込む眼差しは、力強く、真摯なものだった。 「俺は、お前が好きだ。お前は? 好きになれそうか?」  こういうところ、わりと優しい。  私もまっすぐ見つめ返した。 「このまま、いつの間にか、あなたに恋をすると思う」 「ああ。待ってる」  キスの代わり、彼は私の頬を優しく撫でた。  それだけで、正直、胸はドキンと高鳴るけれど、ちょっと照れる。  私が目を逸らし、殿下が笑った。 「まあ、結婚すれば盛り上がるだろ」 「そうよね」 「よろしくな、イーディス。仲良く老けていこうぜ」  差し出された手を握り、立ち上がる。  全くロマンチックじゃない。  けれど、彼は世界一の夫になると確信できた。    私の目は節穴じゃあない。
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