16 愛の狙撃手(※王子視点)

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「これを機に、リーバー伯爵は息子を相続から外したそうよ」 「妥当よ。馬鹿に金を渡しちゃ駄目──」  唐突に言葉を切り、イーディスが立ちあがる。  そして組み立て途中の銃を置き、俺とは反対側の窓に向かって突進する道すがら父親から銃を奪って、無言で発砲した。  男の悲鳴が、窓の外、遠くから小さく届く。  一瞬だった。 「あいつ、殿下を狙ってた」 「なに!?」  ニール大佐が血相を変える。  イーディスは再び銃を構え、窓の外の狙撃手に向かって立て続けに発砲した。父親が装填を済ませた銃を持ち、脇に控える。見事なチームプレイ。 「行くぞ!」 「はっ!」  ニール大佐とその部下が飛び出していく。  これから狩りに出ようとしていた俺たちは、ある意味、準備万端だった。  ダグラスが俺を庇うように立ち、窓から引き離す。  母は自ら、うまい隠れ場所を見つけて小さくなっていた。 「あらあら。まあまあ」 「チッ、逃がすか。ペロ! そいつを捕まえて!!」  イーディスが吠えた。  前庭で待っていたペロが咆哮で応えている。 「信じられない。別荘にまで忍び込むなんて」 「警備を強化しなくては」  イーディスとダグラスが目を合わせずに息を合わせた。 「結婚間際だから浮かれてると思われたのよ」 「モテない王子でしたからね」 「油断したわ」  窓際の壁に背中をつけて、イーディスは次の銃を父親から受け取り、手に馴染ませた。その眼差し。数々の軍功をあげた将軍そのものの、冷徹な闘志が漲っている。 「……」  あれ?  これ、俺、もう愛されてるって事で、いいよな。                              (終)
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