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「……全部、東生のせいだ。
アイツがいたから──俺達は拗れて、引き裂かれたんだ……!」
喉から絞り出すような、唸り声。
ハリネズミのように、自分の身を守りつつ前傾姿勢で警戒する姿の父に対し、樹さんは、背筋を真っ直ぐ伸ばしたまま、父の吐き出すその言葉を正面から受け止めているように見えた。
「覚えてるか……学生最後の年に、皆で遊園地に行った時のこと。
あの時東生は、お前と仲直りするチャンスだから絶対に来い、って言ったんだ。
なのに、あんな騙し討ちみたいな仕打ちをされて──凄ぇ、腹が立った。
お前もだよ、樹!
俺は愛桜に答えなかったのに、何でお前は真奈美に答えたんだよ……!
なぁ……!」
「……」
樹さんが言ってた……ゴンドラの話だ──
父が、この時母の気持ちに答えなかったのは……樹さんの事を想っていたから……?
「………愛月とは……」
それまで閉口していた、樹さんの唇が動く。
「友達以上の関係に、なれないと悟ったから──」
「何だよ、それ……!」
──バンッ
「俺の気持ちを、揺さぶるだけ揺さぶっておいて、……俺から逃げたのかよ──!」
「……」
「俺の気持ちをちゃんと確かめようともしないで……、真奈美と一緒になる事ないだろ……!?」
荒々しい呼吸。
テーブルを叩いた手を、自分の胸に押し当てる。
涙で顔がグズグズになりながらも、それでも樹さんに向ける瞳は真っ直ぐで。
ずっと燻っていたんだろう思いを、ようやく言葉にして吐き出した父は……樹さんを逃すまいと、鋭い視線で縛り付ける。
「お前と喫茶店で会った日──東生から色々聞かされた。
俺とお前がデキてるんじゃねーかって、皆の前で揶揄ったのは……愛桜にフラれた腹いせだったって」
「……」
「──俺が……樹を好きなのを知ってて、わざとやったんだ、ってな……」
「──!」
──両思い、だった……
それを、第三者が横槍を入れて……それで二人の関係が拗れて、壊れてしまったのだとしたら……
胸の奥が、ちくんと痛む。
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