7話 アイスタイム

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7話 アイスタイム

 コンビニまで自転車で行こうと思っていたあたしだけど、ショーはここに自転車を停めて歩こうと言う。 「なんで? アイス溶けるし」 「コンビニの裏にも公園あるの知らないの?」 「いちいちムカつく言い回しだが、知らなかった!」 「そこで食べよ」  歩きだしたが、意外と背が高い。  155cmのあたしが視線を少し上に上げるくらいだから、170はこえてそう。 「君の名前、なんだろう……ずっと考えてるんだけど……意思が強そうでしょ? 日焼けしてるし、声が大きいから、レナとか?」 「おー、2文字名前までは合ってる」 「じゃあ、リン」 「ちがーう」  コンビニに入って、アイスを選んでいるときも、 「じゃ、ソウ」 「それ、アイス。あ、あたしこれにしよー」  大きめのカップに入ったバニラアイスを取り上げると、彼はモナカアイスを渡してきた。 「オレ、これで」  会計を済ましたあとも、彼は唸っている。 「2文字しばりって、結構キツいね」  トロリと溶けかけたバニラをモナカごと口に運んで言うが、あたしにはサッパリ。 「そう? ショーだって、2文字って言えば、2文字じゃない?」 「読み方が? あ、ショーじゃなくて、しょう。本の1章、2章の章って書いて、しょう」 「アキラじゃないの?」 「それは、親に聞いて」 「あっそ」  カップアイスをヘラでこそぎとっていく。  今日は昨日と違って空が濃い青だ。  どこまでも広い、空がある。  高い建物なんて、ここら辺にはないから、地平線とまではいかないけれど、空の端から端をたどることはできる。 「降参。君の名前、なんていうの?」  あたしはポメラを取りだし、打ち込んだ。 「これ」 「あ、ユズだ!」 「ちがう。これで、由鈴(ユリ)って読む」 「ユリ? ……なんか音の雰囲気合ってないけど、漢字の雰囲気とは合ってる。そっか、こういう組み合わせもアリかぁ」 「あんたね、人の名前でキャラ考えないでよ」 「君だってしたでしょ?」 「……それはしたけど。で、章は高校何年? あたしは1年」 「オレも1年。同い年だね。ね、小説、どれくらいから書いてるの?」  そこから始まったあたしへの質問は止まらなかった。  普段はどんなことでインプットするの? とか、やっぱり小説ばっかり読むの? とかとかとか!!!!  だからあたしも答えると同じくらい質問する。  脚本は書いてるの? どんな映画が好き? 好きな映画監督は?────  いつの間にか映画談義になっていた。  やっぱり、サブスク最強ってことになり、お互い楽しかった映画紹介をしだしたが、ほぼ趣味が丸かぶりで、見てない映画はないくらい。 「ウケる。だいたい同じの見てんじゃん」 「そっちこそ。でも、テネットまだなんでしょ? それは見ておかないと」 「わかってるけど、ばあちゃん家じゃ、回線、心許なくてさー」  油を指してない自転車のブレーキが聞こえる。  振り返ると、3人の女子高生がいる。  間違いない。女子高生だ。キャピってるし、茶髪だし。 「章くん、なにしてんの?」  おっとー。  陽キャだったのか、章。
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