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子供の頃は、こんなちっぽけな自分でも、当たり前にヒーローに成れると思っていた。
ビューン、と声を上げながら育美は、公園を駆け回る。
ビニール袋で作った真っ赤なマントを付けて、それと同じくらい赤い髪を舞い上がらせて、私の先を行く育美は、まさに正真正銘のヒーローだった。
「地球の平和も、叶の平和も私が守る!」
育美はそう言って、私の手を取る。
暖かな春風も、そんな私たちの背を押して応援してくれている。
それだけで、私は自分がなんだかとても強くなったような気がした。
大きな犬でも悪い魔女でもドラゴンでも。
どんな強大な敵をも倒して、きっとこの先私たちは何でも乗り越えていける。
育美に手を引かれながら、私はそう思った。
もうずっと前、子供の頃の話だけれど。
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