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カタ、タタッ、カタカタ、タタッ。キィー、ガチャン。私は慌てて跳ね起きて、玄関へ走っていった。
蓮の足音と門の開く音がしたからだ。蓮の足音がちょっと不規則だ。──蓮は私の飼い主さん。いっぱい遊んでくれるし、ご飯もくれるんだ。
ガチャリ、とドアが開く。帰ってきた!
「お帰り!」
蓮は疲れた表情だったけど、私を見た瞬間笑顔になった。
私はワンコ界で一番可愛いらしい。道行く人にもしょっちゅう『可愛い』って言われるから間違ってはないと思う。可愛いって言われると、自慢したくなってニヤニヤしてると『ドヤ顔だね』って笑われる。笑ってくれるってことはいいことなんだと思うんだ。私を見るとみんな笑顔になる。それってすごく素敵じゃない?
ってそれより、蓮、撫でて撫でて〜! 蓮に再開するのは朝ぶりだ。学校の後塾っていうところに行くからなかなか会えなくて寂しい。お母さんや、蓮より年下のコウにぃもいる。でも、やっぱり蓮も揃ったほうが私は嬉しいんだ。
「ゆめちゃんただいま。ちょっと待っててね」
蓮はマスクと手をシュッシュと消毒した。私は消毒の匂いが好きじゃないからちょっとだけ離れて、上り框で私は尻尾を振りながら撫でてくれるのを待つ。靴を脱いでにっこりと笑ってくれた。
「はい、ただいま」
撫でてもらおうと身体を擦り付ける。蓮はわしゃわしゃと撫でてくれた。
あぁ、そこ最高! もっと撫でて〜。ころーんとお腹を出すとさらに撫でてくれた。
ひとしきり甘えると私は満足した。蓮はちょっと寂しそうだったけど。
私のお仕事はお迎えをして癒すこと。もう十分癒されたでしょ?
明日もお迎えしようっと。私は尻尾をブンと振ってベットへ帰っていった。
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