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 特に一洋とは、辛うじて体を交わらせてはいないが、かなり際どい性行為を重ねて一年以上が過ぎている。その間に、自慰では達することのできない体にされ、今では欲望を管理されるまでになっている。  桐機関の実行部隊のリーダーと、設立者である日本公使館の一等書記官という、厳然たる公の立場があるテオバルドとは異なり、幼馴染で所属組織も異なる一洋は、公私の線を引きにくい。しかも一度は、すべてを捧げて自身に執着させようとした相手だ。  あの時拒んだのが理性と自制心のためならば、それを取り払った一洋は、もう志貴を手に入れるのに躊躇しないだろう。それでも側にいてほしいと願うなら、志貴は一洋の想いに向き合わなければならない──彼が去らないやり方で。  それはテオバルドとは公の付き合いに徹し、心を通い合わせるのはやめることを意味する。しかし、まさに今日、志貴は彼との関係に恋人という名を与えてしまったのだ。 ──志貴、恋人と呼べよ。 ──……飼い主と兼任なら、考える。  あの言葉を取り消しても、テオバルドは納得せず、引き下がりもしないだろう。  三年に亘る付き合いでわかる。テオバルドの本質は、煮えたぎるように熱く、情熱的だ。彼を完膚無きまでに押し潰した過去の下──冷え固まった溶岩の奥底に、マグマの核は今も生きている。志貴を見つめる男の目は、死んではいない。  穏便に話し合いで解決できるとは、とても思えなかった。 (もう、あの(ひと)の名を出すしか……)  今も胸に刺さったままの小さなトゲ──テオバルドのかつての恋人が思い浮かぶ。
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