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 あまりに即物的な行為も、残された時を考えれば、抗議する時間すら惜しかった。諾々と男の手に従いながら、志貴は震える声で先を促す。 「っ……も、もう、いいだろう……?」  縋るような問い掛けに、テオバルドは色悪の笑みを浮かべる。 「可愛いな、志貴。こんな目に遭わされて、それでも健気におねだりか。待ちきれないのか、俺を」  テオバルドが揶揄するのは、先を乞う言葉だけではなかった。執拗なシャワーの湯に中を嬲られて、志貴の欲望はゆるく勃ち上がり、その身を震わせていたのだ。  羞恥に言葉が続かない志貴に、平坦な調子でテオバルドが問いを重ねる。 「──それとも、男を欲しがって尻が疼くようになるほど、衛藤に抱かれたのか」  抱かれてはいない、とは言えなかった。  これまで何度も、紙一重の行為を重ねてきた。  一洋の想いを知らされた今、あれをただの相互自慰と強弁することはできなかった。一洋は、自分の欲を殺して想う相手を案じ奉仕し続け、何も知らない志貴は、愚かにも彼の引いた一線を自ら越えたのだ。  挿入こそなかったが、一洋は自らの精で志貴の中を──前も後ろも──侵した。志貴の体を手懐け、一人では悦を極められないように仕向け、その欲望を管理した。  何も知らなかったからこそ、受け入れられた関係だった。そして今後何を求められたとしても、断るつもりもその権利も志貴にはない。 「──自分で確かめたらいい」 「ああ、そうするさ」
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