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「無理です、やっぱり駄目! 我が王お考え直しを! グリムが昔されたことをお忘れですか!」
その発言で複雑そうな顔をするラファエロ。
……僕が昔されたことか……思い出すだけで腹が立つ。
貴族の女の子達からの嫌がらせ、その親達も僕に酷い事言ってきたな。
でも、1番忘れられないのは……
「助けて! 誰か!」
僕の家が燃やされて死にかけた事だ。
その昔、僕の事を婚約者に指名したギムレット王子。
スイーツばかりを食べて王子に見向きもしなかったのに僕をいきなり指名した。
そのせいで叫んで周りから凄い目で見られたよ。
「なんであの子なの!? 王子の事何も気にもしてなかったじゃない!」
「そうですよ! 品がないし! さっきから食べてばかりですわよ!」
「言われてるぞプリンセス」
叫んだ後白目を向いてた私はラファエロの言葉で正気を戻し王子にとっかかった。
「だぁれがプリンセスだ! 僕は君と結婚なんてしないぞ!」
貴族達の目が怖いし、女子の嫉妬も怖い。
何より責任に耐えられないし、好きでもない人と結婚するのも嫌だった。
私の気持ちも知らずにそんな事されたからたまったもんじゃない。
その場は父上が上手いこと言いくるめて何とかなったけど、次の日からパーティの招待状が増えたり、家に来る人間が増えた。
家に来た令嬢は初めはいい顔をするが、話していくうちに闇が見えた。
嫌味を言われたり、暴言吐かれたり、嫌な事を沢山していった。
そのせいで私は家に引きこもり、専属のパティシェだけを中に入れた。
そんなある日私を訪ねて胡散臭い魔導師が現れた。
「やっ! 遊びに来ちゃった!」
「すまんクレア、どうしてもって聞かなくてな」
「帰れ」
「ひっど! 僕達友達だろ~?」
父上がげっそりとしてたから仕方なく彼を屋敷にあげてやった。
この物好きはこの日を境にちょくちょく屋敷に来るようになった。
屋敷に来る度、今私がどんな事になってるか説明をして、どう皆に見られてるかを話してくれた。
「ギムは君がいいんだって、だから他の子をよこすなって王様に言ったらしいよ」
「しらないよ何で勝手に」
「さぁね、君彼に何かした?」
「何もしてない」
不貞腐れながら紅茶をすする私。
「あぁ、だからかもね~自分のこと興味無い子に男の子は燃えるものさ~」
「めんどくさっ! そんな事で好かれても僕は嬉しくないんだけど!」
「ははは、落ち着きなマイフレンド」
「僕は冷静だっ!」
「ほら、一人称。また僕に変わってるぞ」
「あっ……!」
慌てて口を隠して、喋らないようにした。
「感情が高まると直ぐに一人称が変わる癖直さないと、僕に嘘は通じないぞ~」
「べーっ」
「あっ、そうそうクレア、なんか君に会いたいって子がわんさか居るらしいけどどうする?」
「どうもしないよ、私は誰にも会いたくない」
だって同い年は嫌いだもん。
私を穢れた子なんていうし。
不細工だとか、薄汚れたゴミとかもいうし。
僕の事悪く言うんだもん大っ嫌い!
「……まっ、そうだよね。そう言うと思ってさ連れてきちゃった」
「はっ?」
彼がパチンと指を鳴らすと彼の隣から男の子が現れた。
「……久しぶりだな、クレア」
「なっ、なんで!? この! ペテン師! 僕の目を盗んでいい度胸だ! だから入れたくなかったんだ! 少しでも信用した僕が悪かった!」
「騒ぐな、騒ぐな! 君が表舞台に出ないから彼だって困ってるんだぞ!」
「勝手に困れ! 僕がどれだけ酷い目に遭ったか知らないくせに!」
「ごめん、でも本当に私は……!」
「言葉は無用! 僕君のお嫁さんにはならない! どうしても僕がいいなら納得する理由をしめせ!」
そう言うと彼は恥ずかしそうにラファエロに隠れる。
「姿を隠すなんて卑怯だ!」
「それ君にも言えるんじゃないか?」
「うぐっ」
「自分が傷つくのが嫌だからって、巣に籠って何もせずに朽ちていくのかい?」
「うっざ僕を悪く言うな、お前も出禁にするぞ」
駄々を捏ねて、口の悪い僕を彼はものともせずつらつらと僕に言葉をかける。
「好き勝手自分の気持ちを叫ぶのもいいけど、勇気を持ってここに来た彼をちょっとくらい労ってもいいんじゃない?」
彼の後ろに隠れる坊ちゃんをちらりと見る。
確かにさっきまでの僕は……私が嫌いな人間と同じだ。
「……ごめんなさい、怒って。貴方の考えを教えてください。ちゃんと私も貴方と対話したいです」
頭を下げて先程までの無礼を謝罪した。
ここで私は彼と一旦は和解した。
いや、一方的に私が嫌ってただけから和解って変か。
「だってさ、ギム」
「うん、ありがとうラファエロ」
再び彼は前に出て私の顔を直視する。
「えっと、その、勝手に婚約者に決めて申し訳ありませんでした」
「いえいえ、その私こそ暴れてすみません」
ペコペコと頭を下げる私達を微笑ましく思ったラファエロは胡散臭い笑顔を見せ続ける。
なんだちょっとイラッとした。
「それで私を選んだ理由は」
「それは、その場のノリですすみません」
「うん、これだめだ婚約破棄さよなら」
「ちょちょー! たんま! ギムのバカ! 嘘でももうちょっといいこと言ってよ!」
「いや……だってあの場にいた令嬢の中で選ぶなら彼女しかいなかったから、私に興味全然ないし、あの中で一番冷静そうだったから」
「なんか釈然としない」
その場しのぎで選ばれたのはなんか腹立つ。
一目惚れとかそういうロマンティックな理由ならまだわかる。
けどこいつ、ただ面倒臭いから都合のいい私を選んだだけじゃん。
「まぁまぁいいじゃんクレア。君は未来の女王様だぞ?なんの文句があるんだい?」
「文句しかねぇだろこのボケ老人! だいたい知りもしないやつと婚約だなんて……」
「じゃあ良く知ればいいさ! これから毎週日曜日僕はギムをここに連れてくるから、クレアは彼と仲良くなって答えを出せばいい」
「はぁ!? 何勝手に決め……」
「おわっと! そろそろギムのお勉強の時間だ! こっそり連れ出したからバレたらやばい! そんな訳で来週ね!」
「あっちょ! 勝手に決めて帰るなー!!」
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