1話

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毎週毎週彼等は私の家に訪れた。 その度美味しそうなスイーツを持ってくるからついつい入れたくないけど家に招き入れてしまった。 「美味しいー!」 「君が喜んでくれてよかったよ」 「何その僕が作ったみたいな言い方は」 「いやだってギムが作ったからねそれ」 びっくりして宝石のように美しいフルーツタルトと彼の顔を二度見した。 「ははは、胃袋掴まれてやーんの」 「うっさいラファエロ」 フォークを私に向けてにんまり笑う策士を鋭い目で睨みつけた。 「なぁ、クレア」 「なんだよギムレット様」 「その、敬意のあるのか無いのか分からない喋り方は止めてくれないか」 少し私と目線をずらして頬を恥ずかしそうに人差し指でかきながら彼はそう言った。 「では全身全霊で敬意を払って対応しますわ、ギムレット様」 そう言うとしょんぼりするギムレット。 「できれば後者の方が君とはいいんだけど」 「じょーだんキツいよ、ギム。これじゃあ君との仲が疑われちゃうんだけど」 「何だかんだ言ってクレア彼の事気にってるじゃないか」 じーっとラファエロは私の顔を見てくる。 うるさい、やめろその顔、分かってるわかってるから。 言いたいことは分かるからやめろ。 「別に、婚約者とかじゃなくて友達とかだったら私だってあんな嫌がったりしなかったもん」 だって、同い年の子友達いないし。 「だよねー! クレア僕しか友達いなかったもんね!」 「調子に乗るなよクソジジイ」 「えっ? ジジイって言った? ちょっとまって、僕こう見えても君のお父さんより見た目は若いよ!?」 「ラファエロお前、自分が国王の肖像画に沢山映り込んでんの忘れたのか?」 さっき彼が私を見ていた顔で彼を覗き返す。 こいつ、初代の王の時からネズミみたいに肖像画に分かるか分からないかの感覚で描かれてたの私が気づいてないとでも思ったのか。 「なっ、なんの事やら~」 「ギム本当は?」 「王を導く選定の神子」 「こら! そこ! 黙りなさい! 国家秘密!」 慌てるラファエロを見て私達は満足そうに笑った。 「この悪ガキッズめ! ……まぁ、いいっか」 ため息をついて彼は微小を浮かべた。 それが少しぞわっとした。 「ねぇ、クレア」 「何?」 「家の門僕ら以外にも開かない?」 「……それは」 彼の言葉にぎゅっと胸が締め付けられる。 だらんとしていた手に力が入り拳を丸め込む。 「君はこの国で今1番関心のある人間なんだよ。王子に婚約者に指名された後、社交界から姿を消して屋敷にずっと引きこもってる。婚約を結んだかも分からない。あの時のまま時は止まってるんだ」 「そんなの知らないよ」 「知らないよで済まないんだよ」 いつもとは違う真剣な彼を見て私は萎縮した。 目も合わせられなかった。 そっぽを向いて声が小さくなる。 「ごめん、クレア」 「謝るくらいなら私を選ばないでよ」 せっかく心を開きかけたてたのに、これじゃあ閉ざさざるをえない。 「でも僕はやっぱり、君がいい」 「えっ?」 「君に迷惑を掛けているのは分かってる。心無い言葉を浴びせられ僕のせいで傷ついたのも分かってる。本当に申し訳ございませんでした」 「まっ、待って! 膝を着いて私なんかに謝らないで!」 綺麗な土下座を王族である彼が私に見せないで! 私は彼を無理やり立たせた。 「急にやめてよ」 「……ごめんでも」 「なんでそんなに私がいいんだよ。私のどこがいいんだよ、こんな癖のある令嬢を王子が貰うなんて笑われるぜ」 素っ気なく彼にそう言った。 「……僕はあの時、君を都合のいい人だと思って婚約者に指名した。いつも僕を好きだという子は僕の容姿や王族の権力目当てで近づく子ばかりで、君みたいな何にも興味が無い子が僕は良かったんだ」 「そりゃ、そうだろうね」 「でも、君と話してると僕に興味を持って欲しいって思った」 「……」 「なんかね、面白いんだよね。ラファエロと話している時と同じくらい。何も気にしないで喋れる所とか、つい楽しくなっちゃう所とか。僕の隣にはこういう人がいて欲しいなって」 何これ、本当にあれなの? いや、えっ、あっはい。 困る、困る困る困る!! ぼっ、僕が!? まじでいってんの!? この少年頭のネジどっか行ってない!? 「僕を恨んでもいい、したことも許さなくていい。だけど責任は僕がとる。クレアを絶対酷い目になんか遭わせない。君を悪く言うやつは僕が懲らしめる。……だから、僕と一緒に国を背負ってください」 マジで言ってんのこれ。 プロポーズされたよ。 どうすんの私、考えられないんだけど私。 えっ? どうして? 彼その場のノリよね? 性格上問題大ありよ? あれだ、そうだ、急いでんだ。 今決めることじゃないもん。 ここは冷静に答えよう。 今そういうこと言うと後で私よりいい女が出てきたら後悔するって。 人生長いんだもっとゆっくり考えなって。 うんうん、それがいい。 「あっ、あのね今は……」 「辛い思いをさせてごめんなさい、苦しめてごめんなさい」 私が言おうとしたら言葉をさえぎってまた頭を深深と下げた。 もうこれ以上やめてくれ! 私の心が持たない! 「謝らないで! ギム! もういい! もういいから!」 そう言って私は彼を抱きしめてた。 「こっちも一方的に敵視してごめん、責任逃れてごめん、君から逃げてごめん。自己中心的でごめ……これは君もだな、だから一緒に反省しよう、人生の半分くらい使って」 「クレア……」 「いや、でっでも、気が変わったら何時でも言えよ!? 私は何時でも臨機応変に対応可能だからな! 他に好きな人が出来て婚約解消したいとかは何時でも大丈夫だから!」 「君って本当に僕のこと愛してないよね」 顔を真っ赤にして慌てる私を見て、彼微笑んだ。 「てなわけで、クレアの了承を得たってことで来週アルマーニュ邸でお披露目パーティだ! 準備しなくっちゃ~!」 唐突にそんなことを笑顔で言うラファエロ。 「ちょっと待て!? 何でうちでやるんだよ! 城でやれよ!」 「いやぁ、城でやりたいのは山々なんだけどさぁ今ちょっとバタついてて……それにいつも締切ってるアルマーニュ邸の門が開くんだ! 話題性もあると思うんだよね~」 「私の権限で決めれることじゃ……」 「あの堅物には許可はとってるさ!」 ……なんか、父上が可哀想な目に遭ってるイメージが見える。 「という訳だ! 楽しみだね~!それじゃ、時間だから帰るねー!」 笑顔で手を振って彼らは帰って行った。
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