TT-8の逃亡

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2  酪農牧場の牛舎で仔牛が生まれた。  牧場主はメスの誕生を望んだ。オスであれば乳牛にはならないからだ。牛乳を生産するため、雌牛は常に妊娠、出産を繰り返さなければならない。そして生まれる仔牛の半分は必ずオスであり、牧場主を2回に一度の割合で失望させるのだ。  獣医が、生まれた仔牛がオスであることを告げると、牧場主はため息をついた。  生まれた仔牛がメスであれば、左の耳に名前のプレートが付けられた。アリス、リリー、パティ・・・。だがこのオスの仔牛に名前はなかった。親牛のイニシャルを並べ、その8番めの仔牛だったから、右の耳に「TT-8」と書かれたプレートが留められただけだった。 イラスト たやすもとひさ0de5e670-e4dd-452a-93ff-5b9e4e2e5d67
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