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酪農牧場の牛舎で仔牛が生まれた。
牧場主はメスの誕生を望んだ。オスであれば乳牛にはならないからだ。牛乳を生産するため、雌牛は常に妊娠、出産を繰り返さなければならない。そして生まれる仔牛の半分は必ずオスであり、牧場主を2回に一度の割合で失望させるのだ。
獣医が、生まれた仔牛がオスであることを告げると、牧場主はため息をついた。
生まれた仔牛がメスであれば、左の耳に名前のプレートが付けられた。アリス、リリー、パティ・・・。だがこのオスの仔牛に名前はなかった。親牛のイニシャルを並べ、その8番めの仔牛だったから、右の耳に「TT-8」と書かれたプレートが留められただけだった。
イラスト たやすもとひさ
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