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「マルタイを公務執行妨害の現行犯で逮捕しました。こちら監視班、マルタイを現行犯で逮捕しました」  捜査本部の署活系無線に連絡が入った。 「どういうことだ? 逮捕しろという命令は出していないぞ」所轄刑事課長の小須賀が言った。 「それが、監視がマルタイに見つかりまして、絡んできたのでやむを得ず……、すみません」  重要参考人に二十四時間体制の監視を付けた場合、相手にバレないことのほうが珍しい。真犯人は、常に身の回りを警戒しているのだから。しかしいきなり公妨で逮捕するとは。  バンッという音が振動とともに響く。小須賀が目線を横に向けると、捜査本部の指揮を執る捜査一課長の宮畑が両手のひらを机の上に押し付けるようにして立ち上がった。 「でかしたぞ、今すぐこっちに連れて来い」と興奮気味に無線機に向かって言った。 「了解しました」無線機のスピーカーが応答する。  宮畑の瞳が天井の蛍光灯を反射させて、ギラギラと輝いている。この公務執行妨害での逮捕を皮切りに、重要参考人である梶原を一気呵成に追い詰めようと考えてるに違いない。 「あっちから逮捕されに来るとは、飛んで火に入る夏の虫だな。これでこの事件は解決だ」 「しかし、現段階では証拠が不十分かと思われます」 「なに、かまうもんか。やつが犯人で間違いない。身柄を取って自白させりゃ、こっちのもんだ。ぜったい吐かせてやる」
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