896人が本棚に入れています
本棚に追加
ネバーランドフィッシュ
★本編201ページ、律を出産して入院中だった留丸と、お祝いに駆け付けた歳三が二人きりで話した話の内容についてのショートストーリー。高校時代、歳三の気持ちが透にバレた時の話です。
Side:歳三
「あの……さっき、歳三さんの気持ちを透は知ってるって言われてましたよね……それは、あの……歳三さんが透に、告白を……?」
留丸さんが訊いて良いものか躊躇しながら訊ねてくるのに俺が頷くと、留丸さんは目を丸くしてしばらく黙り込んだ。
留丸さんの頭の中には、高校時代の暮れなずむアオハルの校舎、俺が透に「好きなんだ」と打ち明けるシーンでも浮かんでいるんだろうか。俺の顔を呆然と見つめているけど、今目の前にいる俺を見ているわけではないような顔をしていた。
「信じられませんか?僕の青春の1ページですよ」
「いえっ!透を見てたら、歳三さんが特別な友達なんだってことは分かるし、だから……でも……あの、歳三さんは、これからもこのままでいい……というか、そうじゃなかったら僕も困っちゃうんですけど、でもあの、すみません、僕には透しかいなくてですね、だから──」
「ははは大丈夫です大丈夫です。心配しないで。僕は今の形で本当に満足しています。もともと告白するつもりなんてなかったんですよ……ほら、透は潔癖だし、下手すると一切の交流を絶つとかやりそうでしょ?」
支離滅裂ながら必死に伝えようとしてくる留丸さんは相変わらず可愛らしくて、俺は笑いながら、もうはるか昔にも思えるあの日の一幕を、留丸さんに話して聞かせた。
最初のコメントを投稿しよう!