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different future
僕と透が恋人同士になって、1年が経った。僕はその日にちまで覚えてて、でも付き合い始めた記念日なんて高校生じゃあるまいしって……あえて朝逢った時も何も言わず、何もせず、透も何も言わず、何もせず……これも大人としたら普通かなって思ってた。
でもさ。僕はやっぱり寂しくなっちゃって。それでコンビニに行ってシュークリームを2個買ってきた。記念って言わずに、ひとりでこっそりお祝い。
そう思ってたら、僕がもう寝ようって上に行きかけた頃に帰って来た透が、まったく同じコンビニのまったく同じシュークリームを持ってたの。
え、まさかね、と思ったら「あんた、好きだろ」って、僕にそれをズイと渡して洗面所に行ってしまった。それだけしか言わなかったから、はっきりとは分かんなかった。
確かに僕はこのシュークリームが好きで……でも、もしかしてこのタイミングは記念日を覚えてて……?
透が覚えてたって全然不思議じゃない。だって透の記憶力ってすごくて、普段も細かいことまですごくよく覚えてるから。
「ね。これってさ。もしかして──」
追いかけるように洗面所に行った僕が訊こうとすると、うがいと手洗いを終わらせた透が手を拭きながらこっちを振り向いて「今から食ったら確実にその腹につくよね」と、真顔で言った。
「……わ、分かってるし。でも今日は特別──」
「ダイエットは明日からって、明日になったらまた明日からだからそれは一生来ない日だよね」
「ほんとに今日だけだってば!」
じゃあなんで買ってきたんだよ~もう!別に太ってないし。ちょっとお腹がぷくっとしてるだけで……昔からこういう体型だし。
やっぱりこのシュークリームは ”そういう” 意味らしい。僕がそれを指摘しようとしたから照れてあんな風に言うんだよ。
僕は冷蔵庫に仕舞ってた透の分のシュークリームを取ってきて、服を着替えに部屋に向かう透の後ろを追いかけるように階段を駆け上がった。
そしたら、スリッパが階段の縁で滑ってすっぽ抜け、段を踏み外して思い切り脛をぶつけた。
「~~~っ……」
痛みに悶絶。しかもバランスを崩した拍子に透が買って来てくれた方のシュークリームを腕で潰しちゃってて、僕は一気に悲しくなった。
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