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「お前なんていなければ良かった…」
「お前がいるから俺はダメになったんだ」
ピッ……ピッ……ピッ……
「ーーッ!?」
「ハァ…ハァ……」
またあの夢か…
もうやめてよ
私が全部悪いから……
「お姉ちゃん大丈夫?」
隣の部屋から妹の結衣が顔を覗かせた。
「うん…大丈夫だよ」
私はひきつった顔で笑った。
「茜!結衣!朝ごはん出来たから降りてらっ
しゃーい」
下の階から母が私たちを呼ぶ。
台所へ行くと母はコーヒーを啜りながら朝
の占いを見ていた。
「茜、今日から学校でしょ?お弁当作っとい
たから忘れず持っていきなさいね」
母はそう言うと残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
「そういえば茜って…いて座だったけ?」
ふと思い付いたように聞いてきた。
「そうだけど…なんでそんなこと聞くの?」
と聞くと母は、
「今日の占い…最下位だったわよ」
と真剣そうな眼差しで私を見た。
「……それで?」
「アンタ今日これ持っていきなさい」
そう言うと母は私にキーホルダーをくれた。
「何この変なキーホルダー?ブタ?」
「今日のラッキーアイテムの猫のキーホル
ダーだよ」
そう母は真面目な顔で私に言った。
「これ…猫なの?」
真剣な眼差しな母に私は少し狂気を感じた。
私は朝食を食べ終わり制服に着替え支度をし家を出た。外に出ると私はいつも空を見上げる。空は膜のように薄く雲が張っていて新品のブルーシートのような色だった。
「今日は空が綺麗だなぁ」
私はそう呟きながら歩いた。すると、後ろから聞き慣れた声がした。
「おーい茜ーー!」
大きな声で私の名前を呼ぶ声は、いつも聞いているのにも関わらず、なぜか懐かしいように感じた。
「なんだなんだー空ばっかり見てー」
そう私に言う彼女は幼稚園からの幼なじみで私の唯一の親友の松下 ひな である。
「ひなは朝から元気だねぇー」
「茜こそなんか嬉しそうじゃん」
ひなはニコニコしながら私に言う。
「空が青いとなんか嬉しいんだよね」
「私も好きだなー」
二人で空を見上げる。
「そういえば…そのブタ何?」
「あぁこれ……猫のキーホルダーらしい」
「猫…?」
「うん…」
私はひなと顔を見合わせた。ひなは何か言いたげな様子だったが私の表情をいるやいなやクスッと笑い、そのまま学校に向かった。学校に着くとクラス替えで皆騒がしかった。
「なんでそんなに盛り上がるのかなぁ」
「いやいや、そりゃあ盛り上がるでしょ!」
「そうかなぁ、私は別にどのクラスでも変わらないと思うんだよねー…陰キャだし」
ひなは、呆れた顔で私を見た。
「茜はさ可愛いんだからもっと皆と喋った
り彼氏の一人や二人作ればいいのに」
「彼氏は二人いちゃまずいでしょ…」
私たちはクラスの書かれた紙を見に行った。私自身クラスなどはさほど興味は無いが一応見ることにした。
「2組かー。茜は?」
「2組だよ」
ひなは嬉しそうに私の顔を見た。嬉しそうな彼女を見ていると、こっちまで嬉しくなってしまう。
「これからよろしくね!茜」
「うん!こちらこそよろしくね」
私の高校3年生が始まった。
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