第一章 薄紅色の桜と群青の雨

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 始業式が終わり部活動が始まる。私は帰宅部だ。運動はあまり好きじゃない見てるだけで疲れる。ひなはバスケ部でキャプテンをしている。家に帰ってもどうせ暇なので図書館で本を読みながら、ひなの部活が終わるのを待った。 「何を読もう…」  私はつぶやきながら本を探した。本を読むのは好きで昔から色々なジャンルを読み漁っていた。読む本を探すためパラパラめくっていた。すると、中からクモが出てきて私の手に乗った。 「……うわぁぁぁー!!」  大声で叫びながらクモを振り払いその反動で後ろの本棚にぶつかり、その衝撃で1冊の本が落ちてきた。 「痛ッ!!」  私は落ちてきた本を棚に戻そうとした。だがその本は私の目をひきつけた。それは、白黒の表紙で“モノクロな世界"という題名の本だった。私はなぜかこの本に心惹かれた。その本を開くと1ページ目に1行でこう書かれていた。“私は色を知らない"と… 「色を知らない…?」  更に読み進めると、この著者は“色覚異常"という病だと分かった。色覚異常にも色々と種類があるがこの人は、赤ちゃんの頃にベッドから転落し脳の後頭葉の下部に異常が生じてしまったらしい。後頭葉の下部には色を識別する機能がありその部分が損傷し、見る色すべてが白黒になったそうだ。こんな事例は稀らしい。 「私と…真逆だ」  私はふとそう呟いた。そう私の世界はモノクロではなくカラフルだからだ。私が5歳の頃だろうか幼稚園の帰りに母は私がおかしな事を言い始めたという。 「ママはなんで黄色いの?」  母はどういうことか分からなかった。最初私がふざけているのだろうと思ったが母は少し聞き返した。 「ママのどこが黄色いの?」 「…ママの周りが黄色なの」  母は幼稚園で友達とそういう遊びをしているのかと思ったという。しかし、家に帰ってもずっと同じことを何度も何度も聞いてくるので母は少し怒ったそうだ。 「ママは黄色くありません!」 すると私はこう言ったそうだ。 「あ、ママ赤色になったよ」 「え?赤?」  母は、もう訳が分からなくなってしまい言い返すのをやめたらしい。次の日、幼稚園の先生に母は聞いた。 「うちの子最近、色を使った遊びとか友達としたりしていませんか?」 「いえ、そんなような遊びはしてないと思うですけど……」 「けど?」 「茜ちゃん近頃、私たち職員や周りの友達に 『今日は先生オレンジ色だね』とか『ひなちゃんが青いから来て』と言われて見に行ったらひなちゃんが泣いてたり不思議なことを言うようになったのが気になりました」 「そうですか…」 母はそれから私を連れて病院に行った。 「ママ、私どこか悪いの?」 「大丈夫、ちゃんと元気か診てもらうだけ」  それから病院の先生に事情を話し検査をしてもらった。私はその時、私は何か悪い病気なんじゃないかと不安でいっぱいだった。母もそんな気持ちだっただろう。 「立花さん、立花 茜ちゃん」  看護師さんが呼びに来た。私たちは部屋に入り椅子に座り先生を待った。すると、ドアが開き先生が私たちの前へすわりこう言った。 「検査の結果、異常はありませんでした」  母はそれを聞いて安心したのかホッと息を吐いた。すると、先生が続けて言った。 「ただ……」 先生は母見た。 「ただ…?」 母は不安げに聞き返した。 「病気ではありませんが症状から判断すると“共感覚"というものだと思われます」
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