暗く輝く、ここはムロア界

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暗く輝く、ここはムロア界

✯ ✯ ✯ ✯ ✯ 目線を上げると、深い赤紫の空が広がっている。 まだ昼間だというのにあたりは暗く、星が瞬く。 月は、見当たらない。 月や太陽というものはここ、ムロア界には存在しないのだ。 あたりは星の輝きと、至るところに立ち並ぶ街灯がほんのり明るく光をともしていた。 ここには色々な種族の生き物がいる。 フサフサな大きな耳の人狼、赤い目の吸血鬼、土からはいでてきたゾンビ······。 襲ってくることもある。 植物は意思をもち、肉食なものがほとんど。 太陽がなく、この世界の住人は心なく残酷。 基本むやみに人を殺したりはしないが、他人に対して冷淡で、無関心だ。 それなのによく何人かで楽しそうに談笑していたりする。 その会話の中には少しも思いやりはないのに。 僕の思い違いなのか? どちらでも良い。 だって、僕も同じだから。 無邪気で残酷で無関心で、自分のことだけ考えていればいい。 僕自身、他人なんかどうだっていい。 自分のことだけを考え、自分のためになることだけをし、他人に振り回されない。 ······そうしないと、ここでは生きていけなかった。 母さんと父さんが生きていた頃は、違った。 あの二人は他の奴らと違ったんだ。 優しくて、ずっと、僕を守ってくれていた。 二人が優しかったのはきっと、人間だったからだろう。 この世界ではとても珍しい種族だ。 奴らに比べると思いやりがあり、調和を好むらしい。 僕はそんな二人の息子だけど、駄目だったみたいだ。 二人が殺されてから、僕の心には星の光も街灯の光も届かない。 この不思議世界のどこかに、金書という悪魔達が閉じ込められていて、支配できる本があるらしい。 それがあれば、僕は奴らに復讐ができる。 それだけじゃない、世界を支配することだって······! 必ず手に入れる。 僕は容姿も美しいし知識もある。両親が残してくれた金だって。 僕こそが一番、僕こそが正しい。 僕が力を持たない人間だと馬鹿にしてきた奴ら全員支配してやる。 ······冷酷な自分を自覚することは、あまり気分が良くない。 両親はいつだって優しく、僕にもそうなってほしいと願っていたのだろう。 優しさなんてこの世界じゃゴミみたいなものだけどね。 ぼーっとそんなことを考えていた。 というか何だここは、僕は何をしている? 「おい、起きろ」 は? 聞き慣れた声が聞こえ、その瞬間目の前が真っ白になった。
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