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「とにかく、まずは大輝と二人で話をしたいと思っておりますので、連れて帰らせてください」
顔をこわばらせた母親が、リカの部屋の玄関でそう言った。リカの肩越しに目が合い、俺は反射的に下を向く。足元には、俺の中学指定のスニーカーが転がっていた。
「いえ、お母さん。私もお話ししたいことがありますから、どうぞお上がりください」
「お話は後日改めてうかがいます。ご連絡先いただけますか」
目の前で繰り広げられる、口調は丁寧な大人の女同士のバトル。母親は、俺がここで何をしていたのか分かっているんだろう。ご近所さんと仲良くなっておしゃべりしてた、なんて関係じゃないことも。
「大輝は、まだ中学一年生なんですよ……っ!」
「十三歳以上の子には性行為に同意して自分で判断する権利があります。彼はお母さんが思うほど子どもじゃありません」
「そんな……っ」
「本当です。法律で認められているんです。私たちには年の差がありますが、真剣に愛し合っています。そうよね、大輝君?」
同意を求められ、俺はビクッとした。無言でうつむいたのが、リカにはうなずいたように、母親には返事をしなかったように感じてもらえたらいいのに。
二人がじっと、俺を見てるのが分かった。
「大輝、帰るわよ。荷物を持って来なさい。山田さん、電話番号をいただけないのなら、また突然こちらに伺いますけどよろしいですか?」
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