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ゾワゾワ
リカの部屋に乗り込んできた母親と一緒に家へ戻った俺は、そのまま話をしようと椅子に座った母親に
「お父さんに話したい」
と言った。
別に、父親の方が好きとか信頼してるとかじゃないけど。セックスとかオナニーの話を、母親となんかできるわけない。それに、単に少しでも先延ばしにしたかった。父親は今朝から出張に行っていて、数日は帰ってこないからだ。
盛大なため息の後で「分かった」と言った母親を置いて、自分の部屋に向かう。ドアを開けるとまず窓辺に行って、カーテンを閉めた。
どうして前からそうしていなかったんだろう。そんなこと、百万回くらい考えた。もう遅い。でも、誰かが、リカが、今でもあの窓からこの部屋を見てるかもしれないと思うと、カーテンを開けたまま過ごすなんてこと、俺にはもうできない。
俺はドアの方に戻り、電気をつけてから勉強机に座った。すぐ右側にベッド、その向こうに、兄貴の机がある。
物心つく前から、南向きの八畳が俺と兄貴の部屋だった。俺たちの二段ベッドは空間を分ける仕切りとして部屋の真ん中に置かれていて、そのせいでベッドの下段が窓の外から丸見えになっていることに、俺はリカに言われるまで気づかなかったんだ。
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