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午後遅くに降り始めた雨が、ようやくやもうとしていた。
埃っぽかった街路や家々の屋根をさっぱりと洗い流す勢いの土砂降りだった。
うなだれていた庭の向日葵や芙蓉もこれで勢いを取り戻すだろう。
「ツバメが飛んでるわ」
開け放した縁側から、明るくなってきた西の空を見上げて静子さんが呟いた。
漬物の瓶をかき混ぜていた真由美さんは塩でもんだきゅうりを丁寧に糠に沈めてゆきながら、いつもの鼻歌をうたっている。
17時37分のバスが通った。そろそろ大学生の三宅さんが帰ってくる。
三宅さんはとても勉強家で、帰ってきてもすぐ二階に上がり、ずっと本を読んでいる。
無口で物静かでコーヒーばかり飲んでいるけど、星を観るのが好きなロマンチストでもある。
部屋には星雲を写した大きなポスターを飾っているくらいだ。
そして朝は決まって8時03分のバスで出掛けてゆく。
その姿を私は毎日見送る。
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