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僕の緊張がほどけてきたころには雨も完全に止み、静けさが再び訪れた。
すでに日は傾きかけていた。
こんなとき、虹が出たらロマンチックなんだけどな。
神様はそこまでは味方してくれなかったな、と僕は一人で小さく微笑んだ。
2人で休憩所から出ると、そこにはなんとも美しい景色が広がっていた。
「うわぁ……」
来たときは気が付かなかったが、休憩所のあるところは小高い丘のようになっていて、キャンプ場を一望することができた。
雨に濡れた色とりどりのテントが、ほとんど隠れそうな夕日に照らされ、まるでイルミネーションのように輝いていたのだ。
僕も咲良も前を向いたまましばらく黙っていた。
ふとした拍子に咲良の手が触れそうになる。
少し緊張しながらも、そうっとその手を握ってみた。
向こうからもほんの少し力がかかった気がする。
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