はいよぅどうどう

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荻君の住む7階建の団地は、投身自殺が多い。団地の横には田んぼが広がっており、ワザワザ遠くからやって来て、 「田んぼの見える綺麗な場所で死にます」等と遺書を遺して、死ぬ方も居る。 夕方、アルバイトに出掛ける為にエレベーターに向かうと、ドアが勝手に開く事も多々あった。 ある日、帰宅すると、エレベーターホールに香水の匂いがした。 エレベーターに向かうと、「イヒヒ」と、子供の笑い声がした。 そういえば、この前飛び降りた親子は、運動会の前日に落ちたのだと聞いていた。 少し、足が震えた。 エレベーターが近付いて来る。 「…よーい、どん」と、声がして、エレベーターのドアが開いた。 エレベーターとは反対側にある廊下の奥から足音がした。振り返ると、女性が四つん這いで走って来た。 「はいよぅ!どうどう!」 女性の上には、顔の潰れた男の子が跨がっていた。慌てて走って逃げた。住居は3階にある。階段を駆け上がって鍵を出す。 ドアを開けてホッと一息つくと「おかえりなさい…」と一人暮らしの部屋から声がした。
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