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与えてくれるものはなんだってもらうタイプ。だけどあなたはなんでも私に与えるタイプ。解り合えないんじゃない?
女だから性欲が少ないとか。支配欲がなくて支配されたい欲があるとか。
ああ、そういうの全部、全部、嘘なのです。ただ、誰かを犯す肉棒がないだけで、気分はいつだってレイプ魔。
お父さんの事。どうにかしてやろうって思ってた。
どうしてこんな気分になるのか。すごく罪深い私。異常な人間なのかな。そんなことをよく思っていた。
昼間のお父さんにはまったく欲情しないのに。
優しいお父さん、大好きなお父さん。美味しいご飯を作ってくれて、掃除、洗濯も完璧なお父さん。
それなのに。
お父さんは背中に閻魔様を抱いていて、乱暴な言葉遣いでお母さんを愛する男でもあって。その男に私は惚れている。
抱かれたい。という感情だけならすごく簡単だったのに。
なぜか。ねえ、なぜか。
私は支配したくてたまらなくなる。
お母さんを抱いているお父さんの背後から手を巻き付けて。背中に憑りついてやりたい。
私が扉の隙間から、覗いて見える閻魔様が私にとって初恋の人。
そうだったとしたら。地獄に堕ちるっていうのは。
私にとって地獄っていうのは、惚れた男の元を尋ねるようなものなのじゃないかな。
ああ、勝手、勝手な言い訳。頭の中で言葉で現実を捻じ曲げて言い様に言ってるって事も解っているけど、それが一番楽しくて、ああ、愉快だなって思う。
私はそんな整理のつかない考えを頭の中で繰り返しながら、パンティーを脱いで、携帯と一緒に林に渡した。すると林はなんの迷いもなくそのパンティーを自分の鼻先に持って行って思い切り匂いを嗅いだのだ。
「ねえ、変態じゃん」
「うん、女子高生の香りだ」
「なにそれ」
「なかなかこんな事ができるやつなんていないだろうな。俺はなんだか幸せ者だよ」
「いや、なんか趣旨変わってるんだけど」
「何言ってんの。これは大きな楽しみの前にあるささやかな愉しみってやつだよ。じゃあ行ってくる」
そう言って林は自然な動作で私の頭にキスをした。私はなんとなく、「いってらっしゃい」と言って手を振る。それがまるで新婚さんだな、なんて思ったりした。
私は林の車の中で待っている。時刻は午後六時過ぎだった。帰宅部の私は普通ならとっくに帰っている時間だ。今日もお母さんは出張で家にいない。ほんの十五分前には私の携帯にお父さんから「美森、今日遅くなる?夕飯どうする?」と言うLINEが入っていた。お父さんは心配性じゃない。少し私が遅く帰ってきてもめったに怒る事はない。
優しい、お父さん。かっこいいお母さん。その二人から私が生まれた。
だけど私は。
お父さんを愛してしまった。
「愛って、なにかな?」
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