お父さんが悪いのよ。だって魅力的なんだもん。私はなんにも悪くないもん。そんな言い訳を百万回しながら生きていたい。

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お父さんはもう、喋れない。 薬が効いてきたからだ。 呂律が回らなくなる位、気持ちがよくなる薬だ。 体に毒なのか、どうかは聞かなかった。 単純に私達、お父さんをめちゃくちゃに愛したかった。 その衝動を叶えてくれるものならば、なんでも使えばいいや。 人はいつか死ぬ訳だし。 明日の事はもう考えない事にした。 なぜなら父と娘、平凡な関係は今日で終わるからだ。 「さあ、お父さん帰ろう」 私がそう言って、ふらふらなお父さんの体を抱きかかえる。その反対で林がお父さんの体を支えてくれる。 お父さんは私達に抗おうとしたがそんなことは無駄だった。 「美森……なんで、なんで」 気弱な男の顔で、お父さんが私を見つめる。 「ねえ、お父さん。私がいくつになったら私の事、抱ける?」 そんなことを言う私を、お父さん。 思いっきり、思いっきり。 蔑んだ目で見た。 だから私、自由になれた。なんだかすごく気楽になった。だから心の底から笑って、言った。 「お父さん、ただいま!遅くなって、ごめんね!さあ、おうちに帰ろうね!中川さん、さよなら!」 私が中川の奥さんに挨拶すると、林はわはは、と愉快そうに笑った。 「おい、興奮するよな。美森」 「うん?どういうこと」 「俺達、今から強姦魔だ」 「やだなあ、情緒がない」 「いいんだよ、こういう時は直接的にワイセツが一番だ」 「そんなもんかね?」 「そんなもんだよ」 呑気な私達に挟まれて、息も絶え絶えなお父さんは、家の中に連れ込まれてしまったのでした。
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