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1.『はじまり、はじまり〜』 ニャン!
『あっ、痛たたた、、、』
私は息苦しさで目を開けました。そして顔を顰めました。何かが焦げた様な、嫌な臭いが辺り一面に充満していたからです。
いったい何が起こったのでしょう。大きな音が聞こえたかと思ったら、投げ飛ばされた様に身体が軽くなりました。そして今、目の前には大きなトラックが停まっています。
訳が分からないまま、とりあえず立ち上がろうと思いました。しかし、どうしたことか身体はピクリとも動きません。痛みは無いのですが、力が入らないのです。何かに押さえ付けられている様な、そんな感覚です。
一体全体どうしたんだろう、私は首だけ動かして周りをグルリと見渡しました。そして、ようやく状況を把握する事が出来たのです。
大変です、至急、治療を受けなければならない。頭から出血しているからです。
助けを呼ぼうと、もう一度ジタバタしてみましたが、やはり駄目です。身体が言う事を聞かない。
困りました。どうしよう、と戸惑っていると、
ガチャッ!
目の前のトラックから運転手が降りて来ました。よほど慌てているのでしょう、ドアは開け放たれたままです。フラフラした足取りで、一歩、また一歩と近づいて来ます。
それを見て、助かったと胸を撫で下ろしました。藁にもすがる思いとはこの事です。自分ではどうする事も出来ないし、危険な状態である事は分かっていますから。
しかし、それも束の間でした。
「うわっ!、、、」
なんと運転手はその場に立ち尽くしてしまったのです。蒼白い顔で口をパクパクさせて、目の焦点は定まっていません。しばらく待ってみても一向に動く気配がないのです。
参りました、思わせ振りもいい所です。
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