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「街を見に行く? 一人でか?」  シエラの突然の申し出にヴァシレフスはあからさまに否定的な声を出した。 「うん。たまにはブラブラしてみたいなって、お前が一緒だと多分楽しくない気がするから」 「今普通に失礼なことを言っている自覚があるのかどうかを先に聞きたいところだ」 「冗談だよ」と、シエラはクククとヴァシレフスの真似をして喉で笑った。 「本当に、一人で街を見て回りたいんだ。ここへ来てから殆ど城で過ごしてたから、一度この国をゆっくり自分の目で見てみたくなったんだ」 「知らない街で一人は心配だ。せめてカリトンを連れて行け」 「大丈夫だって、か弱き乙女でもあるまいし。こんな体でもその辺の奴よりかは頑丈に出来てんの! 村育ち舐めんなよ!」 「舐めてるんじゃない、ただ心配なんだよ」  そんなことは口にしなくてもシエラにはわかっていた。ヴァシレフスはいつだって対等の人間として自分を扱ってくれる。そんなこと誰よりも知っていたし理解している──。 「これは俺なりの息抜き。な? お前ならわかるだろ?」  ヴァシレフスは複雑な面持ちで最後は渋々シエラの望みを承諾した。
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