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『割と答えられない話』 Side 俺
正直何て答えればいいかな、とぼんやり思っていた。
キラキラした瞳で俺の目をしっかり見て笑みを浮かべるアイツに思考がちょっとフリーズしたから。
”どうやって大きくなったのか”
なんて、俺のDNAに聞いてくれって思う。
中学入るまでは、結構小さい方だった。
一番前じゃないけど、前から数えたほうが早いってぐらい。
それが、部活でバスケをやり始めてからめきめき身長は伸びた。
フルで試合に出たかったのもあって、体力が必要だったし、華奢な体格じゃすぐに吹き飛ばされちまうから率先して筋トレもやった。
小学校までは周りに可愛い、可愛いばっかり言われてたけど、俺の身長や体付きが変わっていくにしたがっていつの頃からかカッコいいって評価に変わったらしい。
クラスの女子から告白されたり、試合を見た他校の女子から手紙をもらったり。
とにかくモテてたんだと思う。
正直、面倒だったけど、当たり障りのない感じに、程ほどに相手をする事で、周りは納得したし、俺自身もそれでいいかな、って気にもしていなかった。
だから、”一途に誰かを好きで告白を断っていた”なんて、ちょっと尾ひれのついた噂話を信じて話しかけてきたアイツに何て答えてやったらいいか、咄嗟に思い付かない。
いつまでも答えない俺に少々シビレを切らしたアイツは、じっと俺の目を見ている。
目・・・そらさねぇんだよなぁ。
アイツと目が合うなんて、割とレアな事で。
いつも俺以外の奴らとつるんでるし。
時折交差するだけの交遊関係だからか、たまに話すクラスメートってだけなんだよな。
アイツにとっては、さ。
「よ~し、わかった。後でじっくり話しようぜ。
そうだな、今日はオレと一緒に帰ること。
約束だからな!」
「は?」
全く考えてもなかった事だったから返事もまた然り、それでもしっかり”一緒に帰ること”っていう約束は聴こえた。
返事よりも先に違う男友達に話しかけられる形で前を向いたアイツは俺の事を振り返りはしなかったけど。
何故か心の中でガッツポーズをしてしまった俺はちょっとオカシイのかもしれない
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