『ポジション』 Side 俺

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『ポジション』 Side 俺

それは、不動のモノで、今の俺が喉から手が出る程欲しい物。 アイツの隣。 自分よりも小さな者を可愛がる傾向は昔からあったように思うけど。 何か違うんだよなぁ。 最初に感じた子犬のような懐っこさは、一面でしかなかったと知ったのはつい最近。 きゃんきゃん吠えそうで、慣れたら俺の身体に体当たりしてきそうな印象だったのに。 ちょっと話をしてみたら、子犬というよりは、可愛がって欲しいけど、どう懐いていいのか分からない、慎重で臆病な子猫だった感じだ。 ふわふわした猫っ毛から、すんなり子猫を連想しなかったのは、クラスの中でのアイツが、もっと元気いっぱいだったからだろうか。 それでも、俺を真っ直ぐに見つめたその瞳が、光の加減で少々青みがかって見えたから、猫みたいだな・・・と素直に思った。 あぁ~さわりてぇ。 うっかり触れたアイツの身体は、とにかくちっちゃくて、その上細くて俺の庇護欲を大いにそそった。 とにかく本物の猫みたいに撫でまわして、囲い込んで、膝にのせて可愛がりまくりたい。 あ、これじゃ俺、変態みたいじゃん。 自分で想像しといてナンだけど。 いつもより遅く登校してきたアイツが、クラスの数人と連れ立って教室に入ってくる。 「セーフ。間に合った~」 「ちょ、あぶねっ、ギリだったじゃん」 「朝から苦しい~」 走ってきて汗をかいたのか、額に張り付いた前髪を、手櫛でくしゃりとかき上げる。 デコかわいい つやつやしている額にちょっかいをかけたい衝動に駆られるが、そこは我慢。 ”暑いから離れろよ!” なんて腕をまわしてくる級友に文句を言ってる姿は、フーッと威嚇している子猫のようで、昨日までの印象と何でか違う。 「はよ」 「・・・おはよ」 こっちを向いたアイツに声をかけると一瞬の間。 何かいつもよりかわいい。 いつもと変わらないはずなのに、何でかなぁ。 と思ったら、表情は変わらないのに、耳だけ赤い。 「ふっ・・・」 「・・・な、なに?」 途端にビクンッと身体を震えさせて意識しまくり。 威嚇もできないぐらい意識してるってことは、誰が一番可愛がってくれるのか、本能で感じてるってところか。 俺が欲しかったのはアイツの隣じゃなかった。 俺が欲しかったのは、アイツの全身で、頭の先からつま先まで、俺のモノだったらいいのにと唐突に理解してしまった。 そのポジションは何と言うのか。 ぶわっと襲ってきた独占欲が、まるっと俺を飲み込んでいくけれど。 それも良いかも、と素直に波に飲み込まれながら、俺はアイツの汗を手の平で拭ってやった。
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