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『近づく』 Side オレ
う~貴重な昼休みを。
あの先生、呼び出したら話長いし、放課後だっていい話だったじゃん。
いや、放課後だって行きたくないけど、職員室なんて。
とりあえず、昼食べなくちゃ。
午後の授業乗り切れなくなっちゃうよな。
バタバタバタ
「お~遅かったじゃん。何、そんな大事な話だったのかよ」
いつも一緒に昼飯を食べる奴らは、すでに食べ終わった後なのか、オレの席の辺りでいつものようにだべっていた。
「はぁ・・・疲れた~。そんな大層な話じゃなかったのに、全然先生話を止めてくれなくてさぁ。もう昼休み終わっちゃう~」
オレ、少々涙目。
だって思ったよりも時間がなくて、弁当食べる時間あるかよ、なんて思っちゃったから。
「ほら、コレやるよ」
後ろの席からさり気なく差し出されたのはオレの好きな”コーヒー牛乳”。
実は毎日欠かさない、オレの栄養源。
「飯、食べれなくてもコレ飲んだらちょっとは腹膨れそうじゃん」
オレがいっつもコーヒー牛乳を飲んでるの知ってたって顔付きで手渡すから頭くる。
そうだよ、オレ牛乳は嫌いだけど、甘くて苦くないコーヒー牛乳は大好きなんだ。
まだ成長期のはずなのに、すでに伸び止まりらしい身長が少しでも伸びないか、なんてほのかな期待の為に毎日飲んでるのも知ってたりするのかよ。
「あ、ありがと・・・」
「ん」
本当は突っ返してしまおうか、とも思ったけど、今日は買いにいく時間もないし、とにかく腹が減ってるし。
鞄から弁当箱を出しながら、ありがたく頂戴することにした。
「ん、つめたっ」
買ったばかりなのか、まだ冷たい水滴をまとったコーヒー牛乳は一生懸命走って戻ってきたオレの喉を潤す。
普段つるむのは違うグループだけど、たまたまオレが前の席に座っているからか、あいつと話す機会も増えてきた。
今日もたまたまだったんだろうけど、本当にナイスタイミング。
「ありがとな」
感謝の意味でもう一度そう言ったオレに、あいつはちょっとだけ眩しそうな表情をして、オレの頭をぐしゃっと撫でた。
「早く食べないと授業始まるぞ」
それがまるで照れ隠しのように見えて、可愛い所もあるんじゃないか、なんてお兄さんぶった感想を持ったのはオレの脳内だけの秘密だ。
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