『気が向いたら』 Side 俺

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『気が向いたら』 Side 俺

昼ごはんを食べた後で、久しぶりに誘われたバスケについ熱中してしまい。 予鈴が鳴る寸前に滑り込んだ教室で、窓際の陽の光を背に笑っているアイツの姿に、何故か胸がざわついた。 何がそんなに面白かったんだろうか。 普段友達と話すよりも心持ち大きな声で笑うその姿は、本当に楽しそうで目を引いた。 額から流れる汗を拭うフリをしてさりげなく周りを見ると、俺以外にも興味深そうにアイツを見ている数人の姿があった。 モヤっとした気持ちが、鳴った予鈴と共に霧散して、俺はアイツの後ろの席に腰を下ろした。 ほわほわとした髪の毛が、差し込む光に柔らかい輪郭を浮かび上がらせている。 ( 触ったらどんな感じなんだろうなぁ。) 目線をアイツの頭から外さないまま、念仏のように教科書を読み上げる担当教諭の声を聞く。 ラジオから流れる音のように、何処か他所の場所から流れてくる感覚が何だか不思議だ。 眠いというよりは、何も考えない無意識の状態で、時間が緩やかに流れているようにも感じる。 いつものように、コックリ、コックリとしだすアイツの頭に、目元が緩む。 俺の最近の楽しみだ。 頬杖えをついた状態で、その姿を眺めていられる今の席順はベストではあるけれど時折、視線が合いわしないか、と思う。 そう、気が向いたらでいいから。 時たまでいいから。 俺の目を見て、同じように笑ってくれはしないか、と。 そう思う。
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