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#2
西日が人形を照らさないよう、人形を部屋の隅にあるキャビネットに仕舞い込み、最後に届いた一体だけを飾り棚に座らせ、私はうっとりとそれを眺めていたら、どこからか沸いた一匹のハエがブンブンと室内を飛び回っていた。外に逃がしたくて窓を開けようかとも考えたが、この時間窓を開けると容赦ない西日が壁面を直撃し、反射した光線が人形を閉まっているキャビネットを照らしてしまう。そうなってしまえば扉の向こうにたたずんでいる人形にもじわじわと日が届き、日焼けしてしまいかねない。
どうしたものか、何かハエを追いやるいい方法はないかと、部屋の中を右往左往していると、どういうきまぐれか、ハエが飾り棚にある人形の右睫の上に止まった。あまりの気色悪さに、わたしはついはたきでハエを叩くと、その拍子に華奢な人形はどさりと棚から地面に落下してしまった。馬鹿なことをしたと反省しながら人形を救い上げると、ガラスの右眼につぶれたハエが張り付いていた。私はゆっくりと自分の右眼をさわると、指に潰れたハエをとらえた。
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