番外編SS 2「魔王の名前」

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「ねえ、ちょっと……」 「ん、どうした、ユズリハ」 「その……あまり意味もなく呼ばないで欲しいんだけど」  エンジュは心外そうにする。 「意味ならあるではないか。そなたの、その照れた顔が見られるからな」  ユズリハの赤くなった顔が、更にまた赤くなった。 「熟れた果実のようではないか、ん?」 「くやしい……」 「何がくやしいのだ、ユズリハ」  エンジュはユズリハの真っ赤な顔を堪能するかのように、もう一度名を呼んだ。  どうやら、「ノックをしない」の他に「ユズリハの名を呼ぶ」が、彼の楽しみの一つとなってしまったようだ。 「いつか泣かせてやる……」 「何か言ったか?」 「……なんでもないわよ、バカ」  小さく呟かれた愛情のこもった「バカ」に、エンジュは笑う。  ユズリハの顎を指先で上向け、その唇を優しくふさいだ……――  〜おしまい〜
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