2. 一国の王もひとりの父親

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2. 一国の王もひとりの父親

「父上、今、何とおっしゃいましたか!?」  ユズリハの頓狂な声に動じることなく、王は威厳のある声で告げた。 「そなたの結婚が決まったと申したのだ。相手はイシュタリス王国の第一王子」  イシュタリスですって!?  西のルナセレネア、東のイシュタリスと対で語られることも多い、東の大国である。 「これほどの縁組はないであろう。政略結婚には違いないが、先方はそなたの肖像画に一目惚れし、是非とおっしゃった。勿論、今すぐにというわけではない。まずは婚約からだが……」 「父上!」 「何だ、ユズリハ。おお、そうか、すまなかったな」  王は娘の訴えを勘違いし、用意していた肖像画を側近に持ってこさせた。
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