部品が理不尽!

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 ズリズリ…ズリズリ…。 「よし。こんなもんか」  ヒバリとふたり運んできた昭和の香り漂う全木製平均台を引きずり、生徒会支配下の体育委員会がしてしてきた体育倉庫内の置き位置に無事設置させたオレは、ヤレヤレとばかりに今度は日陰で校舎を吹き抜ける風が涼しい、体育倉庫と体育館を繋ぐ屋根付きコンクリ製渡りローカの端っこに腰を降ろして寝転んで、誰憚ることもない本格的な大休止の体制に移行していた。 「こんなとこに居たのね。探したんだよ?」  うそつけ。ペットボトルを両手に持って呑気に真っ直ぐこっちに歩いて来てただろうが、オレは見ていたぞ。 「バレてたか♪じゃそゆことでホイ」  距離にして5メートル内外。ヒバリから放られた茶色い液体の入ったペットボトルは弧を描き、寝っ転がるオレの胸めがけ飛んできた。 「あぶねーな。美少年な顔に当たったらどうすんだ」  ハッシと右手で掴んだペットボトル越しに抗議する。 「美少年じゃないから安心してよ。おっさん顔の人♪」 「だれがじゃ!」  オレはムックリ起き上がり、スルッと左隣りに座ってペットボトルの蓋をパシュッと開け口を付ける幼友達(自己評価)に口を尖らせた。  そしてある事実に気付く。 「えっ?どゆこと?なんでヒバリはコーラでオレは麦茶なの?」 「百円玉の初期HPだとそれが限界でした。僕のは初期HP+経験値で四十円あった結果なのです♪」 「よしわかった口を開けろ」  オレはヒバリに挑みかかり、口にしていたコーラを両手でつかみ口の真上で固定させる。 【コーラ早飲み祭り】の開幕である。 「ちょ!ちょっとまっ!炭酸!これたんさ…ゴプゴプ」  フハハハ!聞く耳を持たぬは!オレにも同じもの買ってくれてもバチは当たらんだろうが!  時間にしてほんの数秒、激しい攻防と噴出されるコーラに塗れたオレたちは休戦を迎える。  無論、勝利したのはオレだ。  完勝したと言っていい。なんたってオレは、ペットボトルから産出されたコーラが両手にしかかかっていないからだ。 「あーあ。せっかく買った冷たいコーラが半分以下になっちゃった」  ガッツポーズで勝利宣言するオレに笑みを向け、ケラケラ楽しそうに目を閉じて、全体にコーラ色に薄く染まった体操服のお腹を抱えて笑っている。  そしてそれに釣られてオレも一緒になって、ヒバリの細い鎖骨が見える濡れたコーラの薫る左肩に右手を置いて笑いあっていた。
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