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追悼と購入
亡き友、蓮岡 美恋は有名な小説家だった。
「追悼 蓮岡美恋」と書かれたポスターの下に平積みされた彼女の小説たち。私はその場に立ち尽くしていた。今日は人の入りが少ない。
蓮岡美恋の小説はすべて人間賛歌がテーマだった。多くの読者が命や生き方を救われたと話している。
彼女が心不全で急逝したことが報道されて三日が経過していた。29歳の若さで夭折した彼女を、嘆き悲しむ声は多い。
そんな彼女の最期の作品を私は手に取る。自立するほど長い作品をよく書いていた彼女にしては珍しく短編集だった。
夕暮れの約束と表紙に書かれている。
本を購入し、併設されたカフェで読むことにした。
こんな時でも喉はかわくしお腹も空く。アイスティーを頼んで、席に座り小説を取り出す。様々な女子二人が物語を紡ぐオムニバス方式を取っているが、前半四つの短編は雑誌掲載分で既に読んでいる。それだけが理由ではないが表題にもなっている最後の『夕暮れの約束』のページを開いた。
この話は、蓮岡美恋の最初にして最後のエッセイだ。
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