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「きれいに片付いてるね」
「う、うん」
ヒーターのスイッチを入れながら、鋭いことを言う佐奈にどきっとする。今朝、念入りに掃除をしたのだ。それはもちろん、この子のために。
下心を見透かされたようでばつが悪いが、彼女はあくまでも無意識だ。
「体が冷えちゃったな。あったかい飲み物でも淹れるから」
佐奈に座るように言い、キッチンに立った。
(バレンタインの夜か)
お湯を沸かしながら、どうしても昂ってくる身体を抑え込む。男は獣なんだなと、こんな自分にいつも感じるが、どうしようもない。
だから、彼女を部屋に入れるのは慎重にしている。
はちみつと生姜のホットティーを運ぶと、ソファに並んで座った。部屋も暖まってきたし、お互い顔を見合わせ、なんとなく照れて笑った。
しばらくはクラブの話なんかをしていたが、佐奈がふと思い出したようにそれを口にした。
「東野君も、チョコレートをもらったんだよね」
「え……」
不覚にも動揺してしまい、もろに態度に表れたと思う。突然の、まさに不意打ちだった。
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