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「そういえば、そうだな。そういうことがあったっけ」
例の二人組みのことだろうが、我ながら不器用な惚け方だった。
だが、気を取り直し、なんでもないそぶりで隅に置いたスポーツバッグを引き寄せると、例のものを取り出してみせる。
事実、なんでもないことだ。
幸平が渡されたものと同じラッピングを、やや乱暴な手つきで剥ぐと、同じチョコレートが現れ、カードも同じように入っている。
佐奈がどんな表情でいるのか分からないが、このことを言い出したということは、やっぱり気にしていたのだなと思う。穏やかな彼女だから、怒ってはいないだろう。
が――
「運動クラブの、応援サークルの、no.10のまなみさん、と、no.21の、 ほなみさん」
カードに書かれた会員番号と彼女らの名前を、おずおずと持ち出した。
これには真面目に驚いた。
カードに書かれているそのままを、正確に口にしたのだ。
嘘みたいな記憶力。
「佐奈」
「だって」
――どうして、黙ってたの?
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