東野君のほしいもの<番外編>

18/21

100人が本棚に入れています
本棚に追加
/540ページ
 意外にも拗ねた横顔を見ながら、確かになんでもないことだけど、きちんと言ってやらなきゃなと、反省する。いや、伝えるべきことだと。 「佐奈が、やきもち焼くからだよ」  グッと、含みかけのホットティーを詰まらせたらしい。胸を叩いて、苦しそうにむせている。 「おいおい、大丈夫か」 「ウッウッ」  背中を擦ってやると、何度も大丈夫と頷いた。一生懸命で、まるわかりで、可笑しくなって、つい吹き出してしまった。 「笑わないで」 「うっふふ……ごめん」  唇を尖らせる仕草が、可愛くて可笑しい。  でも、やっぱり佐奈も女で、しっかり俺の恋人だった。  俺のほうが何倍も好きで夢中になってると思っていたのに、こんな反応をもらえるとは、まったく今日は最高の日だ。 「あのな、佐奈」 「ごめんなさい。いいの、もう」  居心地が悪そうに目を逸らすが、逃さない。今、伝えなければいけない。 「俺が好きなのは、君だけだよ」 「……」  こんな台詞、普段は言えない。肝心な場面でしか言いたくない。君は、大切な人だから。
/540ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加