100人が本棚に入れています
本棚に追加
/540ページ
意外にも拗ねた横顔を見ながら、確かになんでもないことだけど、きちんと言ってやらなきゃなと、反省する。いや、伝えるべきことだと。
「佐奈が、やきもち焼くからだよ」
グッと、含みかけのホットティーを詰まらせたらしい。胸を叩いて、苦しそうにむせている。
「おいおい、大丈夫か」
「ウッウッ」
背中を擦ってやると、何度も大丈夫と頷いた。一生懸命で、まるわかりで、可笑しくなって、つい吹き出してしまった。
「笑わないで」
「うっふふ……ごめん」
唇を尖らせる仕草が、可愛くて可笑しい。
でも、やっぱり佐奈も女で、しっかり俺の恋人だった。
俺のほうが何倍も好きで夢中になってると思っていたのに、こんな反応をもらえるとは、まったく今日は最高の日だ。
「あのな、佐奈」
「ごめんなさい。いいの、もう」
居心地が悪そうに目を逸らすが、逃さない。今、伝えなければいけない。
「俺が好きなのは、君だけだよ」
「……」
こんな台詞、普段は言えない。肝心な場面でしか言いたくない。君は、大切な人だから。
最初のコメントを投稿しよう!