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「東野君」
君の仕草、眼差し、何を見ても感じてしまう。
この不思議の正体は、今夜だからこそ俺にもわかる。
唇を寄せようとすると、「あっ」と、大きな声を出して、手にしていたカードを抜き取った。
「な、なに?」
あまりに素早い動きに戸惑うが、佐奈はチョコレートに添えられたカードを凝視している。
「どうしたんだ」
「別のことが書いてあるよ」
「ええ?」
よく見ると、なるほど幸平のものと同じ文面の下に別のことが書き添えられている。
「よく気が付くなあ」
真面目に感心するが、佐奈は気まずそうにしている。
「なになに……東野センパイは来年度のキャプテンですよね。クラブに協力したいので、なにかあれば、いつでも言って下さいね。応援のほかにも、差し入れとか、ほしいものとかあれば、喜んでご用意いたします……か」
随分張り切ったサークルだなと、ありがたいような、困るような、妙なものだった。
「東野君」
「ん?」
佐奈はカードを俺から取り上げると、テーブルの上に置き、その手をそのまま俺の膝に重ねた。
「えっ」
珍しく積極的な触れ合いに驚きつつ、至近距離で見つめ合う。
彼女の瞳は不安げに揺れて、潤んでいる。
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