大好きなひと

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「佐奈のご家族は本当によかったのかな。いい天気だし、絶好のドライブ日よりなのに」 「いいのいいの。善光寺も戸隠も、あの人達はもう数え切れないくらい出かけてるんだから」 「一樹さんは一緒に来たがってたけど」 「もう、お兄ちゃんは私の悪口ばっかり言うから絶対イヤ」  昨夜も、東野君を歓迎して家族みんなで食事したレストランで、兄は私の子供時代の失敗談を披露したのだ。恥ずかしくてやめてほしいのに、兄は東野君と同い年の気安さからかすっかり打ち解け、こと細かに語っていた。  親しみを通り越して馴れ馴れしい態度で、東野君が迷惑しないかハラハラさせられたのだ。 「東野君よりたくさん食べたり飲んだり、まるで主役みたいに振舞って。お父さん達も呆れてたよ」  むくれる私に、東野君はくすくすと笑う。 「いや、俺はありがたかったよ。ご馳走になって、楽しい時間を過ごさせてもらった」 「そう?」  大きく頷いてくれたので少し安心するが、東野君はいたずらっぽい口ぶりになる。 「ここは佐奈の故郷なんだなあと思ってね」 「え?」 「家族と一緒にいる君は、子供に戻ったみたいだった」 「う……」  大学生になって、帰省するたび大人になったと言われるけれど、油断するとついついそうなってしまうのだ。私はもう21歳で、大学も4年目だと言うのに。
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