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おっさんの集い
元警察庁祓魔課の日常 おっさんのキャンプ編
関東平野の外れ、青木ケ原樹海に程近い深い山が、勘解由小路の威、つまるところ冥王信仰の中心地、打伏山だった。
打ち伏しは、元来占い女の古語で、昔からある霊山としてひっそりと知られていた。
その裾野は、不可解なレベルで造成された、広い土地は今や大平原と呼んで差し支えなかったが、そこの木陰に、デカいティピーが建っていて、ティピーの外に設置されたタープの日陰に、そいつはふんぞり返って座っていた。
「さあ始めよう。僕は全員お休みだ。肉酒持ち寄った、金のかからんキャンプをしよう。今日はのんびり飲んで食おう。全員子持ちのおっさんの集いだ。さっさと肉を焼け正男。こんがり焼けたらランドに連れてってやろう。ヘリか何かで」
「誘っといてそのザマかお前は!たまには自分でやってみろ勘解由小路!」
改めて解った。こいつは何もせんのだった。
小学校時代の林間学校、臨海学校、クラス合宿にいたるまで、こいつはいつもこうしてああだこうだ言っていた。
今ではのんべんだらりとふんぞり返って座り、馬鹿みたいに高いワインをがぶ飲みするだけだった。
「そういやあそうだったな。正男も今日は何もするな。今日はお前等が働け。発泡酒なら大量にあるぞ?好きに飲め。下僕っぽい酔っ払い共。ポインターとライフルをしまえとりあえず」
「まあ呼ばれたらやるけどさ。一応王様だぞ俺は。ユキジ、肉を切ろうか。ハオウグマが10キロあるだろう。ゴーマに呼ばれた段階で、色々仕込みはしてきたんだ。朝っぱらから呼び出しやがって全く。久しぶりにフラさんと朝しっぽりしようとよ」
いつもの朝ワン不発の勇者は言った。
「手伝おう。昔から、こいつは全く役に立たん。倒れる前からそうだった」
紙皿を並べて、島原も言った。
集められたのは、お馴染みのメンツだった。
人化オーガの雄、INORIの音楽クリエイター白銀正男。造物主ヤハウェの息子、雷光の神罰代行人島原雪次。そして、異世界アースツー、学園国家アカデミー国王、救星の勇者ジョナサン・エルネスト。
まあ、全員なくなってしまった、ヘルマプロディートス事件の関係者でもあった。
「そういやライルはいいのか?うちの用務員は」
なくなった仲間のライル・グリフィス・コティングリーの姿がなかった。
「ライルはあれだ。日米共同の軍事演習で東京湾に行ってる。あれは排泄物だが貴重なガンダマールの正パイロットだ。ガンダマールはサイコミューン搭載だが、何故かサイコミューンはライルのバイオデータを正式に認識してだな」
お前は何を言っているんだ。
「あいつは放っといて、オーバーフォーティーズのおっさん達の集いと行こう。最後輩のジョナサンは30代だが。肉が焼けたら乾杯だ」
「今お前が飲み干したロマネ・コンティの空きボトルは何だ」
島原は呆れて言った。
お前音頭取れよ。勘解由小路が言ったんで、ジョナサンは立ち上がった。
「まー。しょうがないな。それじゃあ、奥さんに内緒で、かんぱーい!」
まばらにグラスが上がった。
「ほう。ハオウグマか。やっぱり美味いな。こっちにもジビエ肉としてはまあまあの輸入率だ。焼き網とスキレットの使い分けが特にいい。手際もいいぞジョナサン。お前には肉焼き勇者の称号をやろう。だからライフルをしまえ」
「次言ったら熱々のスキレットをお前の顔面にぶち込んでやる」
「ああそうだ。今回は男だけだが、キャンプ場の受付ロビーには通常の3倍の広さの多目的トイレがだな」
「そこを動くんじゃねえええええええええええアホンダラあああああああああ!!!」
この前、ジョナサンはすっかり多目的男の称号が授与されていた。
「別にいいだろうが。俺もしょっちゅマコマコとトイレとか庭とか洗濯室で子作りしてるんだから。メイドにも見られたし」
無茶苦茶な発言があった。
ふと、勘解由小路の携帯からアン♡て声がした。
しばらく凝視して長々と返信入力して携帯をしまった。
「嫁の所在確認メールが来ても応えるなよ。携帯はポッケにしまっとけ。今日はホントに男だけの集まりだ」
「その割に携帯随分ガン見してたな勘解由小路」
「言い訳のメールも長かったな。ん?」
島原は慌てて携帯をしまった。
妻の志保のパジャマからはだけた臍が目に焼き付いていた。
「おっぱい眼鏡は何て言ってた?そろそろ臨月だよな?」
「放っとけ!いい!飲むぞ今日は!」
「そしてあれだ。涼白さんはどんなエロ写メ送ってきた?シジミ坊の妹か弟欲しいって?」
「うるせえよ!衣装といいポーズといい明らかに嫁由小路の影響だろうが!」
真っ白なスケスケベビードールを着たハナちゃんが、パンツを晒して「どこにいるの?9人目作るだすよ♡」ってメールを送ってきた。
うっかり打伏山にいるって言いかけた。
まあみんなそんなもんか。俺はそこんとこ行くとそういうメール攻撃は。あん?
ユノとイゾルテ。アリエールとマリルカは確認したわ。私達はどう?今どこにいるの?
フラさんからの写メには、ベッドの上で裸で抱き合うフラさんとエメルダの姿があった。
むにゅっと潰れたおっぱいと、すっきりしたウエスト。そして二人が履いてるのは、ああこの純白が。
グオン!
うわーい!並べて突き出されたプニップニのお尻!
ん?うわあああああ?!シミが!フラさんおシミがお付き遊ばされておりますよ!
貴方、朝に期待してたからいなくて、久しぶりに1人ニャンニャンしちゃった♡コッソリ会いに来たエメルダも。待ってるわ♡3人でしましょ♡あ♡な♡た♡
あ、エメルダが背後からおっぱいぎゅーっってした写メを。
フラさん驚いた顔して、だっておっぱいからお乳がぴゅーって。
すぐ帰る。すぐ帰りますよ2人共。今ゴーマと遊んでるんだ。
コッソリ返信して顔を上げると、おっかないおっさん3人がこちらを囲んで見下ろしていた。
「返信するなって言っただろうジョナサン」
「裏切りか?勇者さんよ」
「情報が漏れたな」
「う、うわあああああ!」
「向こうじゃ救星の勇者だろうが、こっちじゃ嫁可愛さに男の連帯を裏切るチーターでしかなかったか。ここで問題だ。今回はそもそも嫁に内緒のコッソリキャンプだった。涼白さんやおっぱい眼鏡もそうだが、エロ写メを送るやり方はマコマコの影響だ」
「ちなみにお前のはどんなだった?」
「そりゃあおっぱいの凄い物量と出窓の光り等を駆使したまさに芸術的なノーブラワイシャツで紐パン手でブラブラ、っておい。後で覚えとけよ正男。つまりな。今回はエロはなしだ。純粋におっさんだけの世界だ。マコマコが知ったら最後、前のホストクラブみたいになる」
「ハデスのおじさんにマサーにカゼワンってあれか。嫁由小路に無茶苦茶にされたんだったな」
確か蛇にゃーだったなあれ。
「そうだな。ここんところ子作りとかおっぱいとか尻ばっかだったろう。たまには健全な方向で行こうモンテネグロ」
「モンテネグロじゃないってだからああああああああああ!」
「で?どうする勘解由小路。一杯やったら湖でバスだろう?その為だけにオールドルアー総動員してきたんだ」
「ああそうだな。俺も縦割れのダイイングフラッターの反射板クリアカラーを持ってきてあった。ジョナサンの奴用にタックル一式用意してあるし。とりあえず、逃げよう。魚は釣るって方向で。トキ!移動だ!そしておっぱいを隠せ!今回はエロはなしだって言ってるだろうが!」
「トキのおっぱいはお気に召さぬと。されど御意にございます。興津、私の上着を」
実はコッソリいたらしいトキさんは、天狐モードでおっぱいをさらけ出していた。
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